映画レビュー『ルパン三世 THE FIRST』

今月半ばのことなんだけどお仕事で映画を観ました。人の付き添いね。

あんまり自分では劇場に足を運んで観に行かないタイプの映画を観たので

さっくりレビューです。


ルパン三世 THE FIRST』

 


映画『ルパン三世 THE FIRST』予告【大ヒット上映中】


初のオール3DCGによるルパン。93分。

原作者のモンキー・パンチ氏(今年鬼籍の人となられた。合掌)はかねてから
3DCGアニメの構想を持っていたそうです。wikiの受け売りですけど。


で、どうだったのよ映画? という点ざざーっと書きます。


特別ルパンマニアでない者の感想となります。
アニメは昔のテレビ版と「カリオストロの城」(1979 宮崎駿監督)くらいしか見てないです。

 

導入

 

ルパン一世に当たるアルセーヌ・ルパンも盗めなかったというお宝にルパン三世がアタックする。

例によって仲間たちは

 

「価値の良くわからないものの盗みは手伝わない。今回は降りるぜ」

 

という態度だがどうせいつものように協力することになる。

 

一方、このお宝を狙う美少女泥棒がいて、身の上などを聞いているうちに共闘することになる。
美少女の声は広瀬すず

 

美少女は考古学の天才だが、やむをえず盗みに手を染めている。

 

彼女を操る悪い奴がいるのだ。
実は裏にナチスの残党がいる。

 

ナチスと銭形が追ってくるけどがんばれルパン。
祖父の夢と美少女の為に。


…という話です。


感想箇条書き

・楽しく拝見しました。ご一緒した方もとても楽しんでおられました。

 

・難しいことは一切なく肩の凝らないアクションアドベンチャー
幼稚園年長くらいのお子さんなら楽しく観られる親切な筋立て。

 

「華麗な怪盗がかっこいい仲間と活躍! ワケあり美少女を助ける! 敵はナチス残党!」

 

というフレーズから想像できる内容をきっちりやってくれる映画。

 

・このテの映画で観たい派手なシーンは一通り盛り込んでいる。爆発するカーチェイスする超兵器出る

 

・声優ではない俳優の声の演技もヘンな感じではなかった。

(私はこのへんのこだわりが薄い方なのでコテコテの声優ファンの方がどう思うかちょっとわかりません)

ヒロインの広瀬すずは完全に広瀬すずだったけど役には合っていた。

 

・謎や伏線の回収は丁寧で「あれは結局どうしたの」的ツッコミ処はほぼない。

 話は期待通りに進むが適度に「この先いったいどうなるの?」展開がある

 

・唯一「話の都合でひどく愚かになったり優秀になったりする銭形」の書き方はちょっと醒めるなぁと思ったけど、大騒ぎするほどの傷ではないかな…。

 

このテの「観てる方が醒めるご都合主義」は少なめの作品だと思われます。

 

(人それぞれですが)年端も行かない美少女が天才だったりルパン一味がいつにも増して超人的なのは
「醒めない方のご都合主義」

として観ました。物語を面白くするためのでたらめ。


「読者にストーリーのアラを指摘されたとき、問題点は筋の破綻じゃない。

 

つまらないんだ。

 

面白ければつじつまなんか気にならないんだ」


という意味のことはいろんなストーリーテラーが言っているけど、その通りだな。

……そこが難しいんだけど。

 

金曜ロードショーでやってたら、ビール片手にほほーんたのしーって観られると思う

 

・アクション要素やメカ要素はたっぷりだがバイオレンス度は低め。


機関銃バリバリ撃たれても敵も味方も足をジタバタして避けるようなコミカルな描写が多い。

ルパン原作よりテレビアニメ版のムード。

流血シーンもほぼ無し。悪党の最期も死亡シーンは描写されないディズニー仕様。

 

エロ度はほぼゼロ。峰不二子が下着にすらならない。
(スカートをハラリと脱ぐシーンが『アップの足元にスカートが落ちる』描写で済まされるレベル)

もちろん美少女泥棒のえっちなシーンはない。ママ安心系ルパン。

 

・ルパン一味は形ばかりのワルい言動をするが、美少女に対してほぼ全編に渡り親切。
テレビアニメ版より更に善人度の高い『カリオストロの城』型のルパン。

 

・原作のコミックやアニメの第一期、映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』(1978 吉川惣二監督)あたりまでがルパン、それ以降は認めない!

 ……という方には退屈きわまりない作品と思われます

 

・お宝の眠る遺跡の罠のかいくぐり方が完全にゼルダの伝説
画面左上にまぼろしのハートが見える。


ルパンが罠を破ったとき頭の中であのBGMが鳴り響くわ。ティロリティンティティン♪


この四半世紀にゲームがエンターテイメントに与えた影響についてちょっと思いを馳せた。

 

・キャラクターごとに画風が違う。


ときどき別々のアニメから寄せ集まったように見えて笑ってしまう時がある。
興をそがれる白ける…というほどの不満はないけどちょっと「ンフフッ」と苦笑してしまった。

 

こんな感じなんだよ↓

 

ルパン一味と銭形→おおむね従来のシリーズ風のタッチ

敵(ナチス残党)→比較的リアルタッチな白人男性

敵のリーダー格の男→日本のアニメやマンガに出てくる「酷薄なエリート」風美男子。

美少女泥棒→まるっきり最近のディズニー。というか君、アナ雪の世界から来たでしょう…? レリゴー?

CGでかわいい女の子を生き生きと動かす時に参考にしたのがディズニーだったのかなぁ?

ルパンと美少女が顔をつきあわせて話すシーンの「コ、コラボ…?」感がすごかった。
でも各キャラクターけっこういきいきとしていたので悪い印象は無い。

 

・次元の目がやたら露出される。それって演出の方針なのか3DCGのクセなのか知りたくなった。

この映画って 
「上を向いているけど帽子の影でぜったい目元は見えない」みたいな

テレビアニメでよくみた「絵のウソ」が少なく感じるのね。

 

平面の絵はその不正確さが魅力なんだけど、総じて今作はキャラクターの顔が整っていてクセが少なく感じました。

整ってない顔(ひどい言い方になってしまった)を3Dモデルにするのは大変なのかな?

別にこの点が不満とは思いませんでしたけど気になる。

 

・善人ルパンが好きな人、冬にアニメ映画を観たいキッズが家庭にいる方はお金を払って劇場に行っても満足なさるのではないかしらー。


以上! レビュー終わり!

 

あ、アンドリューのお誕生日だ

おや。

今日はポーグスのドラマー アンドリュー・ランケンの誕生日だ。

(ほかの人のSNSで知ったんだけど

 

『堕ちた天使』の中の"Worm"って曲で歌も披露している!短い短い曲。

物悲しいようなおかしみのあるような

今年で63歳だって。

 

おめでとー

ポーグス乱れ撃ち2 ~2005大阪マザーホールのライブの記録

一回だけライブを見に行っていたのでその記録。


1996年に解散したポーグスは2000年代初頭に再結成し
全盛期のメンバー8名全員がそろって世界各国で
ライブを行った。

 

2005年には来日し、東京と大阪2か所2日間のライブに加え
この年のフジロック・フェスティバルに参加したことが
大きな話題を呼んだ。

 

というわけで
7/27の大阪マザーホールに聴きに行った記録。

 

私はぜんぜんライブ通じゃない人種なんだけど、
遅れてきたファンとしてはどうしても生で観に行きたくなって腰をあげたわけだ。

 

 

マザーホールはけっこう大きなホールだったがオールスタンディングの
会場には人がみっしりひしめいていた。

 

舞台の前方には英国パンクモードの血の気の多そうな男の子が塊になって

うごめいていたが、後方にはビジネススーツの壮年男女も多くいて

客層は広かった。


メンバーがステージに立ち、最後に現れるのがヴォーカルでフロントマン
(目立つ奴ってこと)のシェイン。

 

この日も片手に煙草片手に酒。ヨレヨレと出てきて
煙草持ってる方の手でよりかかるようにマイクを持ち、やっと立つ。

 

アル中の教科書みたいなたたずまいだ。

 

かつてはツアーの過酷さの憂さを晴らす意味もあって

 バンドメンバー全員が飲みに飲みまくる

 

→シェイン脱退

 

→他メンバーも多くがアルコール中毒に悩む中活動を続ける

 

→体調不良等からメンバーが次々と脱退

 

→解散

 

という流れもあったバンドだから、正直ちょっと不安な気持ちもあった。

 

 

「どんな形でもライブで観れたらいい」
というファン心理と
「ぼろぼろの遺跡に過去の名残りを見るみたいならやっぱりちょっとしんどいなぁ」

いう気持ちがぐるぐるしていたが、結論を言うとえらい良いライブでした。

 

 

当日のセットリストはこんな感じ。
ここで調べた。便利なサイトがあるもんだ)

 

曲をご存知の方はリスト見るとムードがわかるかも

 

Setlist

 

  • 1.Streams of Whiskey
  • 2.If I Should Fall From Grace With God
  • 3.Boys From the County Hell
  • 4.The Broad Majestic Shannon
  • 5.Young Ned of the Hill
  • 6.Turkish Song of the Damned
  • 7.A Rainy Night in Soho
  • 8.Tuesday Morning
  • 9.White City
  • 10.A Pair of Brown Eyes
  • 11.Repeal of the Licensing Laws
  • 12.The Old Main Drag
  • 13.Thousands Are Sailing
  • 14.The Body of an American
  • 15.Lullaby of London
  • 16.Dirty Old Town
  • (Ewan MacColl cover)
  • 17.Bottle of Smoke
  • 18.The Sick Bed of Cuchulainn
  • Encore:
  • 19.Star of the County Down
  • ([traditional] cover)
  • 20.The Irish Rover
  • ([traditional] cover)
  • 21.Sally MacLennane
  • 22.Fiesta

 


狭いステージ(いや、狭くないけどメンバーが多いから狭く見える)に

8人の男がぞろぞろいてきっちりタイトに、余裕もあるプレイを披露する。

 

そしてシェインの『何言ってるかわかんないけど良いヴォーカル』がそこにあった。

 

ベロベロ+強い訛りで英語ネイティブでも発語が聞き取れないのに、
歌わんとするところがどうしてかグッと胸にくる。

(事前に素晴らしい詞を知って来れるからだけど。音楽の強みだな)


疾走感のある曲は若い時のエネルギーには及ばず…という場面もあったが、
過去をふりかえるような内容の歌ではこの日の方が素晴らしく

 

(このひと才能に底がないのか)

 

と驚いてステージを観ていた。


シェインはライブ中に何度も休憩に入るけれど、その時は持ち歌のあるメンバー3名が
それぞれ聴かせてくれる。

 

3名ともバンドにとってけっこう大事なヒットナンバーを持っている。
謎の層の厚さだなこういうところ。


シェインの話をおいて、ちょっとこの辺り細かく紹介してみる


スパイダー・ステイシー(リーダー/ティン・ホイッスル担当)は

ロンドンの気のいい不良の兄ちゃんがそのまま年取った感じのキャラで、

持ち歌"Tuesday Morning"(邦題「チューズデイ・モーニング」)は

詞もリズムもシンプルなパンクナンバー。

 

(ライブの話とそれるけど)
スパイダーは2005年リリースのアルティミット・コレクションでけっこう長くバンド史を書いてくれているのだが、

 

これが、

 

なんというか、

 

いい感じに冗長で下手だけど愛嬌たっぷりの文章だ。


ハートの熱さとポーグス愛だけは誰にも負けん的なキャラクターがよく出ていて面白い。
メンバー全員体調不良、シェイン脱退の中バンドをひっぱり続けるのはこういうメンタルの人なのだろう。

 


The Pogues - Tuesday Morning (HQ official video) (1993)

オフィシャルより

 

アルティミット・コレクションはamazon musicで聞き放題だけど、スパイダーのライナー・ノートを読みたい人はアルバムを買うことになる。
あの、このコレクションは歌詞の訳も注釈親切、定評のある翻訳なので興味があったら買いでございますよ。

 

 

メンバー髄一のベテラン、テリー・ウッズ(マンドラ他担当。伝統楽器いろいろ)の

"Young Ned of the Hill"(邦題『ネッドの丘』)は

伝統民謡の"Ned of the Hill"の

ピッチを早く、とてもトラッドにやっている。

歌はクロムウェルアイルランド侵攻を扱った歴史的な内容。

 

酒が飲める飲める飲めるぞー的な狂騒の次に

シギ鳴き渡る灰色の空とヒースの野の重い歴史がこつぜんと

現れるところがポーグスのらしいところ。


フィリップ・シェヴロン(ギター担当)の

"Thousands are Sailing"(邦題『セイリング~海を渡る幾千人』)は

アメリカへ移住するアイリッシュの歌で、彼の最高傑作という人が多い。そう思う。


「民族の命運」みたいなデカい主語を異様に隙の無い構成で5分弱の曲で描き切っていて、ファンの中でも人気の高い一曲だ。


アルバムではこの曲をシェインが歌っていてさすがに素晴らしいが、フィリップのvoはまた別の清冽な魅力がある。

 

アコーディオンでイントロが始まり、つっと前に出た時のちょっとプライドの高そうな佇まいと間奏の時のバンド全員でスイングするプレイがたいへん格好良かった。


たいそう小柄な人で大病をよくしたから年齢よりずいぶん年を取って見えた。


蛇足だけど、今回の渋谷のライブを扱ったどこかの記事で

 

『一番ベテランのフィリップがけっこう元気なのにシェインはヨレヨレ だいじょぶかー』

 

みたいな書き方をされていて

「違うよシェインとフィリップが一番若いの! 同い年だけどフィリップの方がちょっと下だよ…!」と心の中で思った。

シェインの酔っ払いぶりを面白く書くためのレトリックなんだろうけどフィリップとんだとばっちりじゃねーか!

…たぶんテリー(中心メンバーよりおよそ10歳上)とフィリップのプロフィールがごちゃごちゃになったんだな。


(更にライブのことじゃないけど)
シェインの足跡を追うドキュメンタリー・フィルムでフィリップがナレーター的な役回りだったが抑制が効いてユーモアもある話しぶりで頭の回転の早い人だなという印象だった。

↓フィルムはこのタイトルだった

シェイン-ザ・ポーグス:堕ちた天使の詩 [DVD]

DVD買ったら帯の「推薦の言葉」みたいなコーナーに甲本ヒロトが一筆寄せていた記憶がある(引っ越しで現品が手元になくなっちゃったから記憶頼みです)


フィリップはバンドの公式フォーラムに時々ひょっこり現れて短いコメントをしたり、
再結成後のバンドの水先案内人を自ら務めていた感じもあった。

 

ゆくゆくは年齢的に一番下のこの人がバンドのメンバーを見送り、
その振り返りをしていく立場になるのかな、と思っていたらメンバー中もっとも早く他界してしまった…

 

まあ湿っぽい話はよそう。

 

2005年の大阪で彼ら8人は客たちをおおいに沸かせていたのだ。

 

みんなの持ち歌が終わったら新しい酒もったシェインが戻って来る!
立ち方は危ういがちゃんと歌う! またフラッフラで引っ込む! でもまたヨレヨレに戻る!

 

というわけでライブはしっかりアンコール含め22曲。

 

最後は勢いと高揚感でラストの定番 Fiesta で大盛り上がりの中お別れ。

大御所の貫禄十二分のステージだった。

 

 

 

追記

ここからはいわゆる「自分語り」でございます。
当時の自分の状況を書く日記なのでポーグスの記事は無いです。

当時、家人が大阪に数か月出張していて月に数日こっちに帰ってくるという
状態だった。
子どもは上の子が4歳。下の子はまだこの世にいない。


そのころポーグス再結成の話をリアルタイムで知ることができて
「ぜひ観たい」
と意気込むものの小さい子の預け先がなく渋谷のライブは行きようがないなー
フェスに行くのはなお荷が重い…と家人と電話で話していたら

 

「夏休みだし大阪に来たら子どもは見ていよう
ポーグスのライブは俺は何度か見たからいいよ。1人で行ってきな」

 

という話になり、ありがたく急遽大阪行きを決めたのだった。
割といい話の中にいるじゃん14年前の私。

 

ぬいぐるみを抱いて新幹線に乗った息子がいま大学生で
翌年生まれた娘が中学生だ。

後になって知ったことだが、大阪マザーホールもこの年の秋に閉鎖されたということだ。

 

 

何もかも変わっていくので、今はただ当時の記録だけ置いておく。

 

 

 

 

 

The Pogues 乱れ撃ち・1 ゴッドファーザー・オブ・ケルティック・パンク

アイリッシュ・パンク」とか「ケルティック・パンク」という
音楽ジャンルがある。

 

早い話がアイルランド民謡調でパンクロックなわけです。

早いテンポで叩きつけるようなヴォーカルという形式が多い。

旅番組のBGMとか日本で「癒し」というイメージで紹介されるアイリッシュ・ミュージックとは別の畑の育ちである。

 

wikipediaではこんな風に解説されている

 

概要
アイリッシュ・トラッド・ミュージック(Irish Trad Music)+パンク・ロック(Punk Rock)」を意味する。

これは主に日本国内で通用する呼称。世界的には、ケルティック・パンク(Celtic Punk)やフォーク・ロックなどと呼ぶ。

その名のとおり、パンク・ロックの姿勢と、ケルト系民族の伝統音楽を融合させた音楽性が特徴。

そのため、アコーディオンバンジョーマンドリン(ブズーキ、シターン)、ティン・ホイッスル、フィドルバグパイプなど伝統音楽に使用される楽器を用いる。

 

1982年、ロンドンで結成されたザ・ポーグスが始まりとされる。近年、ドロップキック・マーフィーズやフロッギング・モリー
ゴーゴル・ボールデロらの活躍により各方面で再評価されることが多い。

 
日本でいちばん有名なケルティック・パンクは…アレか。


高校野球千葉ロッテの応援歌。マット・フランコデリック・メイの…

 

オイ!オイ!オイオイオイ!
オイ!オイ!オイオイオイ!
Go〇〇(選手名) Let's Go 〇〇
俺たちの〇〇

 

って曲はアメリカ産ケルティック・パンクの雄・ドロップキック・マーフィーズ
"For Boston"という曲が元ネタです。

 

で。

 

このジャンルの元祖と言われるバンド、ポーグス(The Pogues)の事を
紹介していきます。

 

バンドの記事を検索しても

 

「公式ウィスキー発売!」

 

とかゴシップの類をのぞくと2017年くらいを最後に何も出てこない。
そりゃそうだ結成は1982年で今はもう活動していないんだから。

 

物事はみんな風化して忘れ去られていくものだけど

 

「いや、まだ惜しい」

 

という気持ちが無茶苦茶あるので、どこからかThe Poguesにたどりついた人の

 

「へー、そうなの ふーん」

 

を全力でサポートするために当ブログはひたすらつぶやき続けます。
前置き終わり。

 


名刺代わりにこの一曲


The Pogues - If I Should Fall From Grace With God

最高傑作の3rdアルバム『堕ちた天使』

(原題:If I Should Fall From Grace With God)より、表題曲。

ケルティック・パンクのムードが一発で伝わる

 

こんな歌い出しだ

If I should fall from grace with god
Where no doctor can relieve me
If I’m buried ‘neath the sod
But the angels won’t receive me

Let me go boys
Let me go boys
Let me go down in the mud
Where the rivers all run dry


「神に見放されて
医者にも救えなきゃ
土に葬られても
天使も手を取ってくれない

行かせてくれ
行かせてくれよ
川の干上がった泥の中へ放ってくれ」

 

 

悲惨な状況を乾いた笑いで描くのはアイリッシュ文化に根強い伝統だが、
それが更に疾走感あふれるパンク音楽と見事に融合している。

 

…みたいな理屈より

ギネスやウィスキー片手に聴いてただただ気分アガるよね、という一曲。
                  …私あんまり飲めないんですけどね…

 


でもまぁ、これからひたすら理屈をこねるのでつまみにでもしてくださいな。

この曲を作った人たちのお話 はじめるよー。

 

The Poguesの超ざっくり概要

1982年イギリスで結成。
はじめ6人編成だったがいろいろあって8人編成になってからが全盛期。

 

1988年リリースの3rdアルバム『堕ちた天使』が最高傑作と名高く、アルバム中の
クリスマス・ソング『ニューヨークの夢』(原題:Fairytale of New York)が
全英2位の記録。


更に現在でもクリスマス・シーズンのイギリスではチャートに登場する
ド定番ナンバーになっている。

 

シェイン・マガウアンと酒の伝説

 

バンドのフロントマン(第一人者。≠リーダー)、ヴォーカルで多くの作詞作曲を
担当するシェイン・マガウアンの破天荒なキャラクターがとみに有名。

 

「ライブ中もいつも酔っぱらっている」

 

「片手にグラス、片手にタバコでマイクの向かうのがスタンダード」

 

「酒酔いと強烈なアイリッシュ訛りのせいで何を言っているのかわからないのに
なぜか素晴らしいヴォーカル」
ピーター・バラカンが「シェインの英語はぜんぜん聞き取れない」と言っている
から本当に聞き取れないんだろう)

 

といったエピソードはちょっと検索すれば山ほど出てくる。

…ライブはいつも、シェインが何曲か歌うとソデに引っ込んで休憩しちゃうという
仕様である。休憩後は新たなグラスや缶ビールを持って登場。

 

2005年の夏に一度だけライブを見たが全くその通りだった。

 

この仕様が成立する背景には、シェイン以外にヴォーカルが取れるメンバーが3人もいて、それぞれが作詞作曲したヒットナンバーを持っているという事情がある。

 (自分語り失礼ですけど、個人的にポーグスで一番好きなナンバーは
フィル・シェヴロン(ギター)の作
"Thousands are sailing" だ。

バンドで一番若い彼が2013年に誰よりも早く他界してしまった…)

 

 

私はこの種のアル中・ヤク中の破天荒エピソードにはあまりロマンを感じない方なんだけど、シェインの滅茶苦茶な足跡にはイギリス育ちのアイリッシュという背景が重くのしかかっており、彼のエピソードの数々は初見ではおかしく、やがて悲しいという感情を抱かずにいられない。

 

そこについてはおいおい書いていきましょう。

 

現在は

転倒→骨盤骨折して車椅子とかいや歩けるようになったとか、歯が使い物にならなくなってを治したとか、ジョニー・デップにリスペクトされててイベントにデップが来たー

 

…とか、ワイドショー的なネタばかり聞くのが複雑だが、詩人として歌手として音楽家として比類ない存在です。

 

他のメンバーについても順次触れていきたい。だんだんと。


8人の大所帯で生楽器のタイトな演奏を聴かせるバンドというのは
それだけで単純に恰好いい。

相当。すごく。恰好いい(客観性ゼロの文章でごめんね)

 

恰好いいのでとりあえず聞き放題サービス(把握しているのはAmazon Music)で
『堕ちた天使』が丸ごと聴けるしアルバム買っても2000円でおつりがくるから
軽率に触れてみてはいかがでしょう。

 

You Tubeの公式チャンネルでもいっぱい聴けるよ無料だよ…

といったところで今回のエントリーはおしまい。

 


#アイリッシュ・パンク #ケルティック・パンク #ドロップキック・マーフィーズ
#DropKick Murphys #ポーグス #The Pogues

 

 

 

ナマステインディア2019&インドのお菓子


9/28(土)29(日)に代々木公園で開催されていた日印交流イベント
ナマステインディアに行ってきた。

 

公式サイト

 

私が行ったのは28(土)の日中、ほんの2時間くらいだけど。

ひとり部活動開始!

 

出発前 

公式ページや、SNSなどで参加したことのある人のコメントを見ると
イベントのあらましやオススメの準備品はこんなところ

 

  • インド雑貨・服飾・飲食物ほか屋台がいっぱい
  • メヘンディ*1ヘッドスパなどの体験ブースもあるよ
  • ステージイベント随時
  • 食べ物の屋台は盛況だが、食事スペースは少ない&立食用テーブルのみ。座って食べたいならレジャーシートやアウトドア用のイス等の持参おすすめ
  • 人気屋台はけっこう混む。並んで買うか、午前中に買うか、人の少ない店で済ますか
  • 屋台での会計は1万円札のお釣りで苦戦することがある。千円札にしよう


結論から言うとこのアドバイスはたいへん的確でした。

 

特にグループでワイワイゆっくりしたい人にはシートやイス・ミニテーブルあたりあると快適さが違ってくると思う。

 

まあ、一人でかけ足で見ていく分にはシート1枚で十分かなあ。

 

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会場のにぎわい

※写真一部加工しています

 

 サリーやパンジャビ*2を着た
日本人女性グループが、近々公開のインド映画のうわさをしながら歩き

 フツーにスーツのおじさんたちが「ジャイホー!」*3と冷たくて甘いビールをあおる陽気な空間。

キングフィッシャーとか甘いよね。インドビール。

アルコールあまりたくさん飲めないタチだけど好きだな。

 

 衣料品は染色が良くて素敵な物は高価。安価なものはチープな民俗風雑貨店のにおいで若い子かヒッピー系じゃないと厳しい。やったね資本主義!

 

パンジャビとかクルタとかのインド女性の普段着は涼しそうなのにきれいで毎年夏になると

 

「素敵だな。着やすそうだし…」
「いや、でも着ていくところねぇな!? 少っしもねぇな!?」

 

という問答を繰り返す。

 

でも、ちょっと自由な職ならぜんぜん着られそうですよインド普段着。

 

ともあれ、美しい衣装でそぞろ歩く女性たちを見るとなんとなく明るく楽しい気持ちになった。

たまに都会に出ると目の保養になるねー

 

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工芸のワークショップ。テラコッタ細工の壁

真面目に体験交流するブースもある。これは素焼きの壁だけど


(よくわからないけど楽しい図案だな)

と思ってみていたら、通りがかった女性のひとりが連れに

「あれはヴィシュヌ神が山を持ち上げているところ」

と解説してるところに出くわす。

ゲームのNPCみたいなお姉さんだったなあの人。

(ヴィシュヌ云々が正しい解説なのかわかりません…)

 

変わったところでは、このイベントに8年続けて参加しているという「平取アイヌ文化保存会」のブースがあった

 

…けど、パンフレットと民芸品ちょびっとが置いてある地味なブースで人はいなかった。
漫画『ゴールデンカムイ』もすごい人気だからもう少し人がいてもいいのにね。

ステージでのアイヌ古典舞踊の披露がここのメインイベントらしく、興味はあったが時間があわなかったので観なかった。薄いレポートで申し訳ない。


食事

 

 
昼過ぎに食事を買うことにした。

12時台。当然食事は混む時間だけど…


この時間の屋台の人気店は30~40分待ちという感じかな?

 

残念ながらこの日は長く会場にいられない上に衣服を汚せなかったので、
空いている屋台で服を汚すリスクの少ないビリヤニ*4を買って食べた。


…うん、ちゃんとおいしくなかった! ビリヤニ好きだけどこれはアレでした!

 残念なレポート!

 

↓このへんがおいしそうで混んでいました

 

南インド料理シリバラジ
ナンディニ

 (写真撮り忘れた)

 

↑どちらも南インド料理。

カリッとした豆粉のクレープ「ドーサ」と、サラッとしたカレーの南インド的な定食を一度食べてみたいなーと思いつつまだ食べたことが無い。

 


インドの大ドーサの作り方 / Paper Dosa

ほんとに大きいな大ドーサ。 

 

おなじみナンとかのメニューだと「モティ」あたりが老舗で安定してお客さんが並んでました

 

あとスイーツ屋台の甘そう感が強烈で圧倒された…!

 


インドスイーツは全然食べたことが無くて、ネットニュースなどで時々見る


「油で揚げている+すごく甘い 日本人には厳しい」

 

というイメージを持っていた。

 

で。

 

お菓子をその場で作っている屋台をのぞくと、油の中でドーナツ生地っぽい「ジャレビ」がおどっている。

 

→油からひきあげ

→ぺとーっとしたシロップがドバーッ!

→さらにミルクっぽいシロップ「ラブリ」もダダーッという

 

「ガラムガラム(熱々)ジャレビのラブリ」という物を作ってる最中だった。


おいしそうだが服を汚す気配が強くて買えなかった。

ついでに言うと食後のデザートにするには厳しい迫力だ…。


『ガラムガラムジャレビのラブリ』って語の響きがすでに強くて復唱したくなる。

ガラムガラムジャレビのラブリ!

ガラムガラムジャレビのラブリ!

 

食べ物のレポートはこんなことしか書けなくて申し訳ない。来年は食べてみようきっと!


腰を下ろして(シート有能!)食事してるとステージイベントの音楽がいろいろ聞こえてくる

 

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ステージの様子

プロの舞踏団が出てくるのは主に19時~くらいからで、日中はダンスサークルの発表が多い。
でも練度は高め。ここまでたくさん練習したんだなー
選曲は映画のヒットナンバーが多いので


(ああ…確かにこの曲で踊ってみたかったの、わかる…)

とひとり得心しながらしばしステージを観た(気色悪くてごめんね)


お菓子を買ってみた


スイーツの屋台は遠慮したけど、やっぱり食べてみたいインドのお菓子。
映画を観て「アレどんなものなんだろう?」と思っていた物を購入するチャンス!

 

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いろいろ売ってる『セイナン』前

 

こちらでひよこ豆の餅っぽいお菓子『ラドゥ(ladoo)』と

なんだかわかんないが軽くて安かった『ソーンパプディ(soan papdi)』を買って帰る。

勇気…!

 

店員さんが「カルイ。サクサク」と言ってるが参考要素が少ない! とにかく一つ頂こう! 200円。

 

特にラドゥは映画『マダム・イン・ニューヨーク』で大事な役割を持つお菓子で、一度食べて見たかった。憧れスイーツ!

 


映画『マダム・イン・ニューヨーク』予告編

 

さわやかな後味のしみじみ良い映画。内容的には女性向けかな。
コテコテの踊るマサラムービーではないので誰でも見やすい。
全体的に田辺聖子感あると思う

 

それはそうと


帰宅して家族と一緒に食べてみた

 

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ラドゥー

 

レンチン40秒!

ピンポン玉より二回り小さい黄色いお団子。
強烈な甘みを警戒しながら食べたが…

 

あれ。普通においしいですよ。

 

粟(あわ)餅みたいな食感。スパイスの香りはあまりない。
シロップが染みて甘いけど、スパイシーな食事の後に一個だけ食べるとちょうどいい。


ネットで面白おかしく書かれる「甘さしかない」「甘さで殴られる」みたいな印象ではなかった!

 

映画で「できあいのラドゥー」と揶揄される大量生産品でコレなら、料理上手の作るラドゥーが食べたくなるね、と家族と話す。

 

ただ、私も家族(息子と娘)も甘いものはけっこう好きですが


「一度に一個でちょうどいいね」


というのは共通した感想だった。

 

 

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ソーンパプディ

 

事前知識ゼロで購入したコイツを開封していく! ノートパソコンの上で撮影!

 

 

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箱の大きさの参考画像

箱の上にフツーのボールペンを置いてみる。けっこう大きい

 

原材料はひよこ豆の粉、澄ましバター、カルダモン、ピスタチオ…

 

うーん。箱がすごく軽くて「サクサク」らしいが味や食感がイメージができない…

 


口の水分ぜんぶ吸い取られる奴じゃないだろうか…
このサイズの落雁が入っていたらどうしよう…

 

 

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開封

 

!?

 

……

 

…高野豆腐…!? (ざわ…ざわ…)

 

本日一番の緊張が走る。

 

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食べてみる


手で持っただけでホロホロ崩れる。どうやって持てばいいのか

とにかくいただきまーす。

 

 

結論:上品で美味しい。

 

驚いたー!

 

口にサッと溶ける麩菓子というか…似ている物が見つからないけど優しくサラリとした甘味。

 

バター成分のためか、口の水分を取られる感覚はあまりない。

 

カルダモンの香りはほんのりで、香辛料が得意でない人でも大丈夫なレベル。
上に乗ったピスタチオがシューマイのグリーンピース的に楽しい。


熱いコーヒー飲みたくなる味。


シニア世代の母が特にコレを気に入っていた。

そういえば、歯が悪い人でもイケるなこれ。

 

軽い口あたりだが豆+バターで意外とカロリーは強いと見た。

ともあれ美味しいよ。

 

世間の評判は世間の評判。
やっぱり実際に食べてみないとわからないね! というお話でした。


ソーンパプディはほんとにKALDIあたりで買えるようにならないだろうか…


また来年も行きたいな

 

映画のブースも見たり楽しいイベントだった

 

会場はこじんまりとしているけれど、代々木公園でのんびりするとか渋谷原宿を歩いたりすれば一日過ごすのも楽しいだろうなー。

 

この日は夕方から仕事だったので短い滞在だったけど、公園で本を読んだり屋台で買った戦利品を広げながら半日のんびり過ごしてみたいなぁ…

 

まあ去年は行けなかったものに行けたのでよしとする!

 

また来年! ナマステインディア!

 

 

*1:ヘナという染料で書くボディアート。2週間くらい染料は落ちない

*2:チュニック+幅の広いパンツ+ストールの女性の日常着

*3:「称えよ」「万歳」みたいな意味。テルグ語圏のスーパーヒットムービー『バーフバリ』を観るともれなくジャイホーしたくなる

*4:スパイシーな炊き込みご飯。パラッとしている。チキン・マトン・野菜あたりが定番

暗い海はただ沖に泳げ ―映画『ガタカ』紹介

ブログの一本目の記事という事で個人的なオールタイムベスト映画を推して参ります。
ネタバレは無し。

公式サイト

 

 


Gattaca - Trailer

 〇あらすじがわからず面白そうな映画にも見えない公式トレイラー


映画『ガタカ』DATA

1997年(米)公開作品。全106分。サッと見れる長さ。
公開当時興行収入はふるわず赤字だったが、その後長きに渡ってファンを生み続けているSF映画の佳品。
ずっと気になっていた映画でやっと去年観た。

 


遺伝子操作が当然になった世界で遺伝子的に劣等とされた主人公が、宇宙飛行士になる夢をかなえようと委細かまわない奮闘をする話。

 

「努力で道は開ける」型の話だけど、その「努力」の熱量の高さとモラルの逸脱っぷり、主人公がそうまでする閉塞感の描写がひどく胸を打つ。

 

要するにすごくグッときて偏執的に好きな映画なので紹介します。するとも。

 

監督は当時これが初の長編作品だったアンドリュー・ニコル

いわゆる低予算映画だけど


「宇宙は出てくるけどリッチなCGはなくてクールな画面で押し切るぞ」
「壮大なセットは作らないで既存の『なんか未来感ある建造物』でロケして押し切るぞ」
「宇宙服はないから宇宙飛行士はスーツでシャトルに乗るぞ」


というアイディア一点突破の手腕がきわめて冴えている。

マイケル・ナイマンによる音楽の評価も高く、ゴールデングローブ賞の音楽賞候補になりました。


なお、劇中の宇宙開発局のモデルになっているNASAは2011年に『現実的なSF映画』の筆頭にこの作品を挙げている。


動画配信サービスではこれを書いている現在、U-NEXTで見放題
ほか、TSUTAYA DISCUSやamazon primeなどなどでも配信している

 


あらすじ

 

胎児のDNA操作が当たり前になった近未来。
人の価値はDNA配列の欠点のなさで決まっている。
一定以上の遺伝子の欠陥を持つ者は『不適合者』と呼ばれ就学や就職に差別を受けていた。DNA操作を行わない、自然妊娠から誕生した者は『不適合者』になる世界である。


主人公ヴィンセントは不適合者。出生時に「心臓に疾患あり 最長寿命は30.2歳」と宣告されている。

 

彼は宇宙飛行士を目指しているが、それは遺伝子エリートにのみ許された職業である。

宇宙開発局・ガタカの清掃員としての日々を送る彼は、非合法の手段を用いてガタカ内部に潜り込もうと決心する。


闇ブローカーを介して、遺伝子エリートの身分を詐称するのだ。


それは、暮らしに困った遺伝子エリートと契約し、爪・尿と言った遺伝子検出サンプルの提供を受けて、日々の身分チェックをかいくぐり続けるという方法である。


事故で半身不随となった元スター水泳選手・ジェロームからサンプル提供を受けて、
晴れてガタカの宇宙飛行士候補となったヴィンセント。その見返りにジェロームの生活を保証する。
2人の「ジェロームの共同生活」がスタートした。


かくして月日は流れ、一週間後に迫った土星への飛行チームの一員になったヴィンセント=ジェロームだが、ガタカにトラブルが起こる。

 

彼の素性を疑っていた上司がガタカ内部で殺害されたのだ。

 

当然捜査の為、局内に警察が入ってくる。

ヴィンセント=ジェロームは宇宙へ発つことができるのだろうか?

 

なお推してみる


ぱっと見の硬質で美しい画面の印象(いわゆる「おしゃれな映画」っぽい)に似合わず映画のストーリーはきわめてシンプルかつ熱い。

 

物語は主人公と彼に関わる三人の人物を中心に、はじめは抑えて、やがてぶつかる互いの感情をミシミシ言わせながら結末へ突き進む。

 

ここでは準主人公たちを少し紹介。


ヴィンセントをめぐる三人の人物


アイリーン


 ガタカの人間にしてはDNAスコアがいまいち、宇宙に憧れながら宇宙飛行士になれないことは受け入れているヒロイン。
 閑職ポジションかつ美人なので、外部から来た刑事の接待役をつとめることになる。

 

(「人間の価値は遺伝子スコアで決まる」のに、スコアの低いアイリーンは「美しい」という矛盾がサラッと提示されているわけだが、そういった世界の不合理は作品の随所で描写される)

 

 無機質な美女として登場するが、ヴィンセントと惹かれあうにつれて可愛くなるのわかっちゃいるが可愛い。


 巨大な太陽光発電所の夜明けをヴィンセントと一緒に見に行くシーンは、
幸福そうな彼女と、何げない日常動作にも正体がバレる不安を抱えたヴィンセントの悲しさの対比が際立っていて好きなシーンだなぁ。

 

あと、アレだ。
一応ベッドシーンはあるが、いたっておとなしい物なのであなたが誰かといっしょに観ても気まずくなるようなものではない。

 

(脱線するけど)90年代くらいのハリウッド映画って、エロがぜールんぜんウリにならないようなタイプの作品でもとりあえずビール! 感覚で

「さほどエロくもうれしくもないし話の流れからしてもあってもなくてもいい、コメントに困るベッドシーン」

が入っていたような気がする。刺身の横のタンポポというか…(キリがないからやめます)


まめちしき的な話をすると、ヴィンセント役のイーサン・ホークとアイリーン役のユマ・サーマンはこの作品が縁で結婚している。
(2004年に離婚してるけど)


ジェローム・ユージーン・モロー


 遺伝子エリートの元オリンピック水泳選手だが、事故による下半身不随で無為の生活を送る青年。
 オリンピックの成績は金メダルを期待されながら銀メダルに終わっている。

 自分の遺伝子サンプルをヴィンセントに提供することで生活の資を得ることを選ぶ。
 夢に突き進むヴィンセントの伴走者となることで、彼の心境にも変化が起きる

 

 作中ではミドルネームの「ユージーン」を名乗ることが多い(2人ともジェロームだと混乱するでしょ)


 演じているのはジュード・ロウ(作品公開当時25歳)なので

 

 「遺伝子が完璧なので僕は美男」

 

 と言われても納得する以外に無い。あーそうっスね、確かに…


 カラーコンタクトで瞳の色を整えたヴィンセントに向かって

「僕の眼の色の方がきれいだ」

と言い放つような輩であり
 端的に言うとダメな美男の魅力欲張りパックという感じのキャラクター。

 

 こうやって書くとなんか女性向け映画って趣だが、ユージーンの存在は全てのくじけてしまった者・立ち上がれない時を生きる者の象徴なので、彼の存在をまるっと他人事にできる観客はそういないんじゃないかな。

 

 狂気ともいえるひたむきさで自己実現につっ走るヴィンセントと長椅子に沈み込むユージーンがひとりの「ジェローム」として生きる。

 その日々から起こる化学変化が『ガタカ』の大きな見どころだ。


 心境に変化が起こり、だからといってこの世界に彼が出ていく場所は無し…
というのがユージーンをめぐるストーリー。


 映画のラストの彼については、私は


 「そうか」

 と言葉が出ただけだった。

 

 良かったら映画を観て、胸をざわざわさせながら他の人の感想を読まずにいられなくなるこの感覚を共有したりなんか言わずにいられない心境をここでどうぞ話してください。喜びます。
 この項おわり。


アントン


 ヴィンセントの実の弟。両親はヴィンセントが就学にも困った経緯から、アントンには遺伝子調整を受けさせている。
 世間的に言っても優秀な遺伝子スコアの持ち主で、物心つく頃には兄より体格のいい弟として一家に存在することとなる。
 
 家の近くの海岸で水泳勝負するという兄弟の遊びは、ヴィンセントの人生の転機として繰り返し描かれる大事なシークエンス。

 (前述のユージーンも元水泳選手で、ガタカは「暗い水を泳ぎ行く映画」です)

 

 ヴィンセントに対して庇護者的に振る舞い、彼が宇宙飛行士の夢に固執して両親を悩ませることには苦い顔である。


 アントンのエピソードはあまり書くとネタバレになるから書けない…。

でもね。個人的にはアントンとヴィンセントのエピソードが一番グッときた。


 主人公ヴィンセントのパーソナリティーの輝きが爆発するくだりが、アントンとの絡みで発生するからだ。


 世の誰にも期待されていないがただ自分がなさんとする事に踏み出す時の不安と恐れ
 それを突破する時のエネルギー


 それが二人のやりとりにもっとも鮮やかに描かれている。

 

ガタカ』は台詞に無駄がなく、良いフレーズが多いことでファンには有名な作品だが、私は

 

"I never saved anything for the swim back"
(戻ることは考えずに 全力で泳いだ)


というヴィンセントのモノローグがこの映画で一番好きだ。


 遺伝子操作してない兄・遺伝子優秀の弟は容貌は少しも似てない


(アントンを演じるローレン・ディーンはがっしりとした男性的風貌で、イーサン・ホークは普段ナイーブな役どころの多いキラキラタイプ)

 

しかし

「俺はこの件では絶対に引かねぇ」

という時の態度がそっくりである。


おわりに

 

ネットには結構な数の『ガタカ』のレビューや感想がある。(この投稿だってそうだ)
何か言いたくなる作品なのだ。

賛否両論なところもあり、この映画にガッカリした人のレビューもこれまたうなずける内容だなーと思って読みました。
けれど私は配信で見た後、上映会(よくリバイバルがかかる映画なんだ)を見つけてわざわざ見に行ってしまった位のファンなわけです。

 

もう何も言うことはないので、良かったら観てください。以上!